さて、その後イギリスの出版社に現地の書店を紹介してもらいました。Heffer & SonsやBlackwell’sなどです。今度は、それらの書店に洋書を注文することになりました。当時神戸の有名洋書販売店では言語学、英語教育、英文学などの最新刊の情報をカタログのように作っていたので、そのカタログも参考にしながら、以前と同じようにメールを書いて、本を注文します。1980年代のころですから、インターネットもありませんし、Emailを使うというわけにもいきません。そこで、まず購入したい本をリストアップして注文書を作成して郵送します。たとえば、簡単に某出版社から貴書店のことを聞いたので、以下の本を注文させてください、といった内容を書きます。英語圏に出すビジネスの文書ですので時候の挨拶も不要、ズバリ用件を書きました。注文の重要な部分は、
I would like to order the following books, and would be grateful if you would kindly send me a quotation including shipping costs. I would appreciate it if you could provide me with a quotation for shipping costs by air, sea, and SAL.
というような具合です。「〜してください」というリクエストはplease do(つまりsendなどの動詞)〜という形は使われず、通常はI would appreciate it if … のような形が使われることが多いというのは、出版社への手紙を何十通も書いた際に実地で徐々に学んでいたので、真似して使わせていただきました。
さて、本そのものの価格はポンド建ての現地価格で買えるので、日本の洋書店に比べれば格段に安いのはわかっているのですが、問題は送料がいくらかかるかということです。もちろん船便が1番安いのですが、日本に到着するのに、やはり2、3ヶ月はかかってしまいます。航空便はもちろん早く到着します。うまくすれば1週間位で当時でも届いていたのですが、問題は航空便の料金です。あまりに航空便の料金が高すぎると、何のためにイギリスから輸入をしたのかわからなくなってしまいます。それでも神戸にあった洋書店で買うよりもは航空便で輸入した方が、郵送料を含めたトータルでの本の価格は安くなったことを覚えています。
さて、そこそこ料金が安くて2週間、あるいは3週間程度で到着するSA L便と言うのがありました。これはSurface Air Liftedというのが正式名らしいのですが、書店から本が実際に積み込まれる空港まで、そして日本到着空港から宛先までは陸上輸送され、その間が航空機にの利用になるというものです。どうやらこの航空機利用も直行便のようなものは使わず、安いキャリアに積み替えつつ輸送されるようです。速さの点と、価格面のバランスを考え、このSAL便を利用していたことが多かったように記憶しています。
さて、忘れないよう先に書いておきたいのですが、注文した本が到着したら、私が興味をもちそうな新刊の出版社のチラシ数点とともに、彼らイギリスの書店が独自に編集して作ったカタログを送ってくれたものでした。これは、まるで神戸にあった洋書専門書店と同じでした。洋書を直接イギリスに注文し始めてからでもこの神戸の書店にはよく行っており、この書店が作成した専門書カタログもよくもらって帰ってきていました。ただ、悪いとは思ったのですが、この日本の洋書店では本の注文はしませんでした。注文はあくまでイギリスの書店にしていました。時に、イギリスの書店のカタログには掲載されていないが日本の洋書店のカタログには紹介されている専門書があったので、参考にはなりました。
さて、本題ですがいよいよイギリスの書店に欲しい本を注文しますが、問題はさらにその次です。イギリスの書店からの返信には、見積書が送られてきます。本の価格は割引はないので、これは送料の見積りのためです。こちらが航空便とSAL便、そして船便とそれぞれの送料の見積りが欲しいとリクエストすれば、それぞれの場合の見積りが送られてみます。さて、その見積りの書類ですが、quotationとか、estimateではなく、proforma invoiceというタイトルの書類が届きます。これは実際に輸出する前の仮の送り状のことなのですが、結局は見積り書と同じです。
さて、そのproforma invoiceを見て送料の見積りを参考に輸送方法を決めて、ようやく注文を出します。ただ、当時はまだクレジットカードはまだそれほど普及していませんでした。また、お店にいない状況で、手紙でカード番号を伝えることは、当時は考えもしませんでしたし、実際にもやっていなかったと思います。そこでどうしたかというと、先に送金したのです。しかし、銀行から小切手で送金すると、手数料が高くつくのです。当時でも一件につき数千円かかったと思います。そこで、郵便局から送金することにいたしました。実はproforma invoiceには、銀行口座情報とともにGIROというものの口座番号が記載されていました。いろいろと調べてみるとどうやらこれは国際的な郵便局間の外国為替決済らしいのです。しかも手数料が大変安く、せいぜい数百円でした。
そこで先に郵便局に行き、郵便局の外国為替で送金します。大きな郵便局でないと扱っていなかったので少々不便でした。また、郵便局の職員の方が外国為替送金のことを知らないケースもあり、苦労することもありました。そこで、大きな郵便局で送金したら、この外国為替の用紙をまとめてもらってきたものでした。さて、無事送金できたら、今度は郵便局でもらった領収書をコピーして、手紙と一緒に送り返します。
「送金しましたので、SAL便で本を送ってください」
という文言を伝えるのですが、その場合に、Enclosed please find the copy of the GIRO remittance receipt.などと、実践で学んだEnclosed please find… という形を使ったものでした。そうやって、繰り返し送金しているうちに、自然に国際的な仕事用の通信の英語が使えるようになっていったのです。
文型練習で学んだのではありません。ただ、自然発生的なコミュニケーションの中で、回数をこなすうちに「形」があるということを学びます。そして今度はこちらもその「形」を使い、通信を実践するのです。学習した後は、自分でいろんな形に変形できるようになるのです。
さて、まだまだこの極めて小規模、かつ個人的用途でのビジネス英語関係では経験がありますが、また機会をあらためて書いてみたいと思います。